「きちんとした仕事だが、大変ではない」──日本社会が求める“持続可能な看護師像”とは?

日本では、看護師という職業は長年にわたり「やりがいはあるが激務」「過酷な仕事」というイメージが定着しています。しかし近年、この印象に変化の兆しが現れています。それが、「きちんとした仕事だが、大変ではない」という、よりバランスの取れた働き方への模索です。 本記事では、看護師という仕事の本質を見直し、現代日本社会において“持続可能な働き方”としての看護師像を再考します。

看護師=大変という固定観念の背景

日本では長らく、看護師の仕事は「夜勤が多く」「精神的・身体的に負担が大きく」「離職率が高い」職種として語られてきました。厚生労働省の調査でも、看護職の離職理由として「人手不足による業務過多」「勤務体制の不安定さ」「職場の人間関係」などが挙げられています。

一方で、看護師の国家資格は安定性が高く、給与水準も比較的安定しているため、若者や女性を中心に一定の人気を保ち続けています。


変わりつつある看護師の働き方

1. シフトの柔軟化と時短勤務の導入

近年、多くの医療機関では「ワークライフバランスの改善」を掲げ、シフトの柔軟化や週休3日制の導入が進んでいます。育児や介護と両立しながら働ける「時短正社員制度」や「夜勤免除」などの制度も広がりつつあります。

2. 業務の効率化と分業

医療現場ではICTの導入が進み、電子カルテの活用、情報共有アプリ、看護補助者の積極的配置により、看護師が「本来の看護」に集中できる環境づくりが始まっています。これにより、“無理なく働ける看護”が少しずつ実現されつつあります。

3. 職場の人間関係改善とメンタルサポート

ハラスメント防止研修、メンタルヘルス相談窓口の設置、ピアサポート制度の導入など、職場環境の改善にも注力する医療機関が増えています。特に若手看護師の早期離職を防ぐため、プリセプター制度や定期的な面談を通じた支援が重視されています。


「大変じゃない」=「やりがいがない」ではない

「大変ではない」という言葉は、決して“やりがいがない”という意味ではありません。むしろ、「無理をせず、プロフェッショナルとして長く働き続けられる環境」を意味します。

例えば、患者とじっくり向き合いながら看護できる在宅看護や、予防医療の現場で活躍する保健師、メンタルケアに特化した精神科看護師など、負担を抑えながら専門性を活かせる場は拡大しています。


日本社会がこれから必要とする“新しい看護師像”

高齢化が進む中で、医療・介護サービスの需要はさらに高まっていきます。しかしその担い手が過労やストレスで離職してしまえば、社会全体の医療基盤は維持できません。

そのため、今後の日本が求めるのは、**「きちんとした仕事でありながら、無理なく続けられる看護」**です。患者にとっても、笑顔で接してくれる余裕のある看護師の存在は、何よりも大きな安心材料となるでしょう。


終わりに:看護師の“持続可能な働き方”が社会を守る

看護師は、命を支える重要な職種です。その使命は重く尊いものですが、だからこそ「大変であること」を前提にすべきではありません。

「きちんとした仕事だが、大変ではない」という新しい価値観は、看護師一人ひとりの人生を豊かにし、同時に日本の医療全体をより強く、より優しくする鍵になるのです。